学校健診での成長曲線の活用
平成26年4月に公布された「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」によって、平成29年度から児童生徒等の健康診断に際して、子どもたちの発育を評価する目的で、身長・体重成長曲線を積極的に活用するようにとなりました。成長曲線を活用した発育の評価は、小・中学校に在籍している児童生徒全員を対象に行います。(高等学校及び特別支援学校においては、個別の指導や相談に活用して下さい。)
成長曲線をグラフ化していくことで、従来の横断的評価のみでなく、縦断的評価を加えることになり、従来見逃されてきた児童生徒の成長に係わる課題や疾病を検出できることが期待されます。
図1 成長曲線基準と肥満度曲線基準図(*1)
1.~9.群の自動検索条件
- 身長の最新値が97パーセンタイル以上(統計学的な高身長)
- 過去の身長Zスコアの最小値に比べて最新値が1Zスコア以上大きい
- 身長の最新値が3パーセンタイル以下(統計学的低身長)
- 過去の身長のZスコアの最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい
- 身長の最新値が-2.5Zスコア以下(極端な低身長)
- 肥満度の最新値が20%以上(肥満)
- 過去の肥満度の最小値に比べて20%以上大きい(進行性肥満)
- 肥満度の最新値が-20%以下(やせ)
- 過去の肥満度の最小値に比べて20%以上小さい(進行性肥満度減少)
- 1-9 以外
*太字で示した2、4、5、7、9が重要で、養護教諭が健診の際に特に学校医に提示すべき条件となります。
実施の手順
1.成長曲線作成と、判定してもらう児童生徒の選別
- 養護教諭は内科検診までに成長曲線グラフを作成し、自動検索群の、②(小学校のみ)・④・⑤・⑥(の内、肥満度50%以上)・⑧(の内、肥満度-30%以下)・⑨ について選別し、学校医に判定を依頼する。
- 成長曲線のデータは、内科健診の日程より発育測定が後に実施される場合は、前年度の1月測定のデータなら使ってよいこととする(前年度4月データなど、3~4か月以上古いデータは不可)。
→中学校の内科健診の日程の都合で、小学校から卒業生(6年生)分の1月発育測定の結果が必要な場合は、早めに小学校に連絡する。
- 養護教諭は、自動検索条件で検出された児童生徒の身体計測値の誤り・入力ミスがないかを事前に確認する。
2.内科健診時の学校医による判定
- 養護教諭は、判定を依頼する児童・生徒の〔成長曲線(*1)〕を〔成長曲線個人票(*2)〕とともに健診時に学校医に提示する。
- 基本的には、学校医は健診時間の中で成長曲線等を確認して判定する。しかし、学校医の都合で持ち帰って検討したい場合はこれに当たらない。その際には、連名簿も参考にしていただく。
- 学校医がその場で判断に迷うケースに限定して、上伊那医師会の「成長曲線小委員会」で判定を行う。(詳細については、下段にて解説)
→自動検索条件で検出された全てのケースを小委員会に掛けることは避けていただく。
3.要医療判定者への受診勧奨
- 受診勧奨は所定の様式(*4)によって行う
- 要医療とされた場合に、小児科またはかかりつけ医への受診を原則として、必要に応じてその医療機関から専門医へ紹介していただくか、保護者の判断で小児科医院、病院小児科を受診していただく。
◆上伊那医師会「成長曲線小委員会」について
- 上伊那医師会内に設置し、メンバーは6人前後
- 委員会開催回数は年1-2回の予定
- 7月上旬には委員会を持ち、夏休み中に受診ができるように夏休み前に判定結果を学校へお返しする
- 「成長曲線小委員会」へは、〔成長曲線グラフ〕と、判定の材料となる児童生徒の身体健康状況(*3)を記載した〔成長曲線個人票(*2)〕を添付する
- 「成長曲線小委員会」に判定を依頼するのは学校からとする
- 個人情報を含むため、原則的に資料は直接学校から上伊那医師会へ届け、判定結果も直接受け取っていただく
*やむを得ず郵送する場合は、切手貼付返信用封筒を同封する
◆(*3)成長曲線グラフに添付する児童生徒の身体健康状況情報
(学校で把握している範囲で良い)
- 染色体や遺伝子異常
- 心疾患
- 内分泌疾患
- 代謝疾患
- 骨系統疾患
- 特徴的な二次性徴(2年生以下の乳房発達など)の有無
図2 症例
上記成長曲線の疾患名
進行性肥満 | 思春期やせ |
思春期早発症 | 後天性甲状腺機能低下症 |
資料
成長曲線小委員会依頼書R2.1.27版(*2)
こちらから、PDFファイルをダウンロードしてください
受診勧奨様式R2.1.27版(*4)
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