はじめに
日本は、世界に類を見ない高齢化社会に突入しています。2020年9月の全人口の28.7%が65歳以上の高齢者です。推計では認知症の人の数は2025年には700万人を超えると予想されています。「歳のせいでぼけた」とよく言われますが、認知症は単なる加齢のためではありません。加齢とともに増加する病態のひとつです。認知症とは、どんな病気でしょうか。認知症の定義や症状など基礎知識について簡単に説明します。
認知症と生理的な物忘れ(良性健忘)の違い
| 認知症 | 生理的な健忘 |
原因 | 病気 | 加齢現象 |
記憶障害 | 経験自体を忘れる | とっさに思い出せない物忘れ |
自覚 | なし | あり |
見当識障害 | あり | なし |
社会生活 | 困難 | 支障なし |
精神症状 | 多い | なし |
認知症とは
認知症とは、ほぼ正常に発達した知能や記憶が、後天的に脳の病気などの原因によって持続性に障害され、日常生活や社会生活に支障を来した状態です。認知症は単なる物忘れや病気の名前ではなくて、様々な原因で大脳の神経細胞の働きが悪くなり持続的に生活に支障が出ている状態をさして「認知症」といいます。
認知症の症状について
認知症の症状は、大きく中核症状と周辺症状に分類されます。
認知機能障害・中核症状
脳の障害の直接の結果、神経細胞の働きが悪くなり生じる認知機能の障害を中核症状といいます。代表的な中核症状は記憶障害です。聞いたことを忘れる、置き場所を忘れて探し物が増える。あるいはしまい忘れる。直前に起きたことも、自分で体験したことも忘れるなどのエピソード記憶の障害などがあります。一方、古い過去の記憶は、比較的覚えていることがあります。症状が進行すると、古い記憶もだんだん失われていきます。
また、時間や場所、人物などが分からなくなる見当識障害などもみられます。時間や季節の感覚が最初に薄れることが多いです。判断力・理解力の障害もみられ、筋道を立てて考えたり、二つ以上のことを言われるとできなくなることがあります。
周辺症状(BPSD)
周辺症状とは、認知症にみられる精神症状や行動障害をいいます。具体的には、いないものが見える 幻視、ものを盗まれたなどと言う 物とられ妄想、うつ症状や不安感、無気力(アパシー) といった感情障害(精神症状)、徘徊、興奮、攻撃、暴力などの行動の異常があります。周辺症状(BPSD)は身体機能、本人の心理的状態、介護状況の相互作用で生じると考えられています。中核症状の改善はなかなか難しいですが、周辺症状(BPSD)は不安感や不快感、ストレスなどによって2次的に生じることが多いので、様々なサポートや環境を整えることによって、改善が期待できます。
主な中核障害の種類と解説
記憶障害 | 新しいことが覚えられない。つい最近のことが思い出せない。(記憶が抜け落ちる) |
判断力の低下 | 物車の重要性に基づいた選択や、社会的な規則に沿った行動ができにくくなる
|
見当識障害 | 記憶障害・理解力判断力の低下のためにわからなくなる。
時の見当識(年月日) →場所の見当識→人物の見当識の順番で低下する
今日は何月何日? → ここはどこ? → あなたは誰? |
失行(しっこう) | 服がうまく活れない、道呉がうまく使えないなど、手足の動きは問題がないが、目的を持った動作がうまくできなくなる。(着衣失行・構成失行など) |
失認(しつにん) | 目や耳の機能は正常にもかかわらず、視覚や聴覚の情報が正しく認識できない。
(視空間失認・身体失認・手指失認・半側空間無視など) |
失語(しつご) | 物の名前が出てこない。言葉の示す意味が分からない。 |
遂行機能障害 | 物車を順序立てて行えない。計画的に段取り良く行動できない。
(料理ができない・買い物ができないなど)
|
主な周辺症状(BPSD)の種類と解説
妄想 | 現実にないことを疑って思い込む。(ものとられ妄想・嫉妬妄想など) |
幻覚 | 見えないものが見えた1) 問こえたりする(幻視・幻聴)
※レビー小体型認知症の場合は、幻視は中核症状 |
不安・焦燥 | 一人でいるのを不安がって家族について回るなど落ち活かない。「困った」などの言葉を繰り返す。 |
暴言・暴カ・興奮 | ささいな事で怒り出し、大声をあげたり怒鳴ったり、手を上げようとしたりする。時に感情が抑えられず、激しい暴力をふるうこともある。 |
介護拒否 | 人に世話をされることを拒否ずる。社会的に強い立場であった人などには強くみられる。特に入浴や排せつの介助は羞恥心により拒否が強い。 |
うつ症状 | やる気が出ない。気持ちがふさぎ込む。人と会うことを嫌う。家に引きこもる。重症になると、食事が食べられないなど命を脅かすことも... |
睡眠覚醒リズム障害 | 夜眠れず、昼間ウトウトするといった昼夜逆転の生活リズムとなる。数日寝て、数日起きるという場合もある。 |
徘徊 | うろうろ歩き回る。家の外に出て迷ってしまうこともある。 |
食行動異常(異食) | 花や紙など食ぺ物ではないものを口にする |
認知症の種類と治療について
認知症を来す疾患には様々です。代表的なものは、脳にβアミロイド蛋白質が蓄積するアルツハイマー型認知症、幻視や妄想がよくみられるレビー小体型認知症,脳梗塞や脳出血の結果、二次的に脳が傷害される血管性認知症などがあります。
認知症は治らないという誤解も多いようです。認知症の一部は適切な治療によって回復可能な病態もあり、一番多いアルツハイマー型認知症ならば薬物療法によって進行を遅らせることもできます。
認知症は早期診断、早期治療が有効です。もの忘れが進んできたと感じたら早めの受診をお勧めします。ご本人はもの忘れの自覚が乏しいことが多いので周囲の方々の気づきが何より大切になります。まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうといいでしょう。
認知症 | アルツハイマー型認知症 | レビー小体型認知症 | 前頭側頭型認知症 | 脳血管性認知症 |
特徴的な症状 | 記憶障害(初期は近似記憶障)・失語・失行・失認・遂行機能障害・見当識障害・妄想・うつ症状・アパシー | 幻視(人や小動物・虫など)妄想・パーキンソニズム・抗精神病薬に過敏性あり | 人格変化(脱抑制、感情鈍麻自発性の低下など)・行動異常(常同行動)・滞続言語・自発語の減少 | 感党障害、運動障害・脳の障害部位によリ麻痺や失語など症状は多様・情動失禁(感情的に泣笑)まだらな認知症状 |
人格変化 | 晩期に崩壊 | 晩期に崩壊 | 早期に崩壊 | 保たれる |
病識 | なし(初期にはあり) | なし(初朋にはあり) | なし | あリ |
経過 | 徐々に進行する | 段階的に進行する (再発予防が大切) |
基礎疾患 | | 高血圧、糖尿病、心疾患 |
男女比 | 女性に多い(男女比1• 2) | 男性に多い | 持になし | 男性に多い |
頭部CT MRI所見 | 海馬の萎縮 →大脳の全般的萎縮 | 海馬の萎縮は比較的経度 | 前頭葉と側頭葉の萎縮 | 脳実質内に梗塞巣 |
認知症が心配になったら
認知症は、誰にも起こりえます。現在、65歳以上高齢者の7人に1人が認知症と言われています。数は少ないものの、65歳未満で発症する若年性認知症もあります。認知症になっても、全ての能力が失われるわけではありません。家族や地域の方々の理解やあたたかな支援があることで、住み慣れた地域で暮らし続けることができます。
認知症が心配になったら、個人や家族で抱え込まず、様々な機関に相談することが大切です。
認知症対応医療機関のご案内
※認知症サポート医療機関:認知症の人の診療に習熟した医師のいる医療機関です。かかりつけ医や、地域包括支援センターと連携しながら支援を行います。
認知症相談医及び認知症サポート医
○県が実施する「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を受講した医師で、地域のかかりつけ医として、日頃の診察などで認知症について相談に応じられる方です。認知症について、気になることがありましたら、何でも気軽にご相談ください。
○なお、この名簿には、認知症の診断や治療等を専門的に行う医療機関の医師も一部含まれておりますが、これらの専門的な医療機関を紹介するための名簿ではありませんのでご了承ください。
○「*」は認知症サポート医で、国が指定する研修を受け、認知症相談医から相談を受けたり、介護との連携の推進役となったりする医師です。
中村 正勝 |
天龍堂医院 |
辰野町平出 |
0266-41-0121 |
伊藤 隆一 |
伊藤外科医院 |
辰野町伊那富 |
0266-41-3388 |
岩脇 俊也 |
富士見高原医療福祉センター両小野診療所 |
辰野町小野筑 |
0266-46-2017 |
村岡 瑠以子 |
上島医院 |
辰野町中央 |
0266-41-0143 |
出口 博一 |
上伊那生協病院 |
箕輪町中箕輪 |
0265-79-1424 |
三浦 浩平 |
箕輪ひまわりクリニック |
箕輪町中箕輪 |
0265-98-7206 |
生山 敏彦 |
いくやま医院 |
箕輪町中箕輪 |
0265-79-1988 |
福島 紀子 |
福島医院 |
箕輪町中箕輪 |
0265-79-2071 |
福島 雅夫 |
福島医院 |
箕輪町中箕輪 |
0265-79-2071 |
長田 和裕 |
長田内科循環器科医院 |
南箕輪村 |
0265-72-4043 |
栢沼 勝彦 |
伊那中央病院 |
伊那市小四郎久保 |
0265-72-3121 |
中畑 英樹 |
中畑内科・消化器科クリニック |
伊那市日影 |
0265-77-3711 |
下條 信行 |
下條医院 |
伊那市手良野口 |
0265-76-5353 |
清水 まゆみ |
田畑内科医院 |
伊那市中央 |
0265-78-6668 |
高橋 丈夫 |
伊那神経科病院 |
伊那市荒井 |
0265-78-4047 |
野澤 征一郎 |
片桐医院 |
伊那市日影 |
0265-72-4072 |
田畑 幸男 |
田畑内科医院 |
伊那市中央 |
0265-78-6668 |
佐藤 隆雄 |
春日医院 |
伊那市中央 |
0265-72-3803 |
重盛 隆一 |
重盛医院 |
伊那市荒井 |
0265-72-2384 |
高橋 信之 |
たかはし医院 |
伊那市荒井 |
0265-71-5121 |
木村 純 |
木村内科医院 |
伊那市荒井 |
0265-72-3915 |
野口 修 |
元の気クリニック |
伊那市西春近 |
0265-74-2007 |
河野 宏 |
河野医院 |
伊那市東春近 |
0265-72-3208 |
野沢 敬一 |
野沢医院 |
伊那市西町 |
0265-74-5000 |
林 篤 |
林整形外科医院 |
伊那市西町 |
0265-76-5525 |
酒井 義公 |
酒井医院 |
伊那市富県 |
0265-72-4835 |
麻沼 奈穂子 |
富士見高原病院附属みすず診療所 |
伊那市美篶 |
0265-71-5556 |
鈴木 貴民 |
伊那市国保長藤診療所 |
伊那市高遠町長藤 |
0265-94-2001 |
岡部 竜吾 |
伊那市国保美和診療所 |
伊那市長谷非持 |
0265-98-2017 |
神山 公秀 |
医療法人神山内科医院 |
伊那市西町 |
0265-78-5151 |
山田 思鶴 |
駒ヶ根高原レディスクリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-1130 |
下島 秀一 |
竜東メンタルクリニック |
駒ケ根市東伊那 |
0265-83-5177 |
本田 哲三 |
昭和伊南総合病院 |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-2121 |
前澤 毅 |
前澤病院 |
駒ヶ根市上穂南 |
0265-83-2151 |
山口 浩史 |
昭和伊南総合病院 |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-2121 |
松田 あずさ |
なごみの森 こころのクリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-98-7112 |
一瀬 泰之 |
昭和伊南総合病院 |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-2121 |
須田 泰之 |
須田医院 |
駒ヶ根市赤須東 |
0265-81-5050 |
多田 秀穂 |
昭和伊南総合病院 |
駒ケ根市赤穂 |
0265-82-2121 |
秋城 大司 |
花の道クリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-81-8171 |
古樫 薫 |
かしの実クリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-98-0590 |
座光寺 正治 |
座光寺内科医院 |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-83-3222 |
髙山 伸 |
高山内科クリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-6690 |
長崎 正明 |
昭和伊南総合病院 |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-2121 |
前山 浩信 |
まえやま内科胃腸科クリニック |
駒ヶ根市赤穂 |
0265-82-8614 |
中谷 均 |
中谷内科医院 |
駒ヶ根市上穂栄町 |
0265-81-1377 |
神戸 正博 |
神戸医院 |
駒ヶ根市上穂栄町 |
0265-82-3522 |
土金 彰 |
つちかね整形外科クリニック |
駒ヶ根市下市場 |
0265-82-7715 |
木下 粒一 |
木下医院 |
駒ヶ根市中沢 |
0265-82-3712 |
伊藤 美果 |
東伊那すこやかクリニック |
駒ヶ根市東伊那 |
0265-83-4024 |
野々村 邦夫 |
のどかクリニック |
飯島町飯島 |
0265-86-6705 |
柿田 充弘 |
つどいのクリニック柿田 |
飯島町飯島 |
0265-98-8608 |
平沢 勉 |
平沢内科医院 |
飯島町飯島 |
0265-86-2121 |
加藤 尚志 |
南向診療所 |
中川村大草 |
0265-88-2019 |
加藤 尚之 |
南向診療所 |
中川村大草 |
0265-88-2019 |
南 宗人 |
中川村片桐診療所 |
中川村片桐 |
0265-88-2512 |
認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは、認知症の専門医療と専門相談窓口を提供し、かかりつけ医や市町村包括支援センター介護事業所などとの連携を担う中核機関です。
上伊那圏域では、令和2年4月に長野県立こころの医療センター駒ヶ根が県の指定を受けて「認知症疾患医療センター」を開設しています。
こころの医療センター駒ヶ根
こころの医療センター駒ヶ根 認知症疾患医療センター
ここ駒通信 認知症について(特集)
認知症の治療
早期発見・鑑別診断の大切さ
もの忘れが気になったら、まずは、早めに身近な「かかりつけ医」にご相談することをお勧めします 。認知症に似た症状があっても、別の病気の可能性もあります。治療中の内科の病気や内服している薬、時には生活環境によって、様々な認知症症状(もの忘れ)やせん妄などの精神状態が生じることがあるからです。「かかりつけ医」から、状況に応じて専門医療への紹介をしています。
※参考:標準的な認知症ケアパスの概念図(厚生労働省作成)
鑑別診断後の治療とサポートについて
市町村の地域包括支援センターへの相談は躊躇せず、早めに行うことをお勧めします。
住み慣れた地域で、その人らしく暮らしていけるためには、認知症の予防や早期診断・早期対応が非常に大切となります。「その人を中心とした」医療と介護の連携で、切れ目のない医療・介護の提供「地域包括ケアの実現」が地域医療(医師会)が目指す姿です。
※参考:厚生労働省 新オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)
〇作成 長野県立こころの医療センター駒ケ根 認知症疾患医療センター
長野県立こころの医療センター駒ヶ根
認知症疾患医療センター
専用電話番号 0265-98-0766
専門スタッフが電話や面談で認知症に関する専門医療相談をお受けしています。認知症の当事者やご家族はもちろんのこと、医療・介護福祉関係者からの相談にも対応しています。